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カラーの持ちを左右する「pH」の話

― 知られざる“pH設計”が染色と褪色のスピードを決めている

ヘアカラーが上手く入ったのに、なぜかすぐに色が抜けてしまう人と、驚くほど色が長持ちする人がいます。この差を生む重要な要素の一つが 毛髪と薬剤のpH(ペーハー)バランス です。

「pH」は、理科の授業で習う酸性・中性・アルカリ性を示す指標ですが、実は カラーの浸透・定着・褪色(色落ち)すべての段階に深く関与 しています。

  1. そもそも“髪のpH”ってどれくらい?

健康な毛髪は 弱酸性(pH4.5〜5.5) に近い状態を保っています。このpH環境では、キューティクル(髪表面のうろこ状の層)が 適度に引き締まり、外部刺激から内部を守るシールド機能が高い ことが特徴です。
• pHが上がる(アルカリに傾く) → キューティクルが開く
• pHが下がる(酸性に傾く) → うろこが閉じて引き締まる

これが、カラーの「入り」と「持ち」に直結します。

  1. カラー剤の多くは“アルカリに傾けて染める”

一般的なヘアカラー(酸化染毛剤)は、発色のために キューティクルを開いて色素を内部へ入れ込む 必要があります。そのため薬剤は 弱〜中アルカリ領域(pH8〜10付近) に設計されていることが多く、
• 「色が入るドア(キューティクル)を開ける」
• 「内部のメラニンにもアプローチし発色の環境を整える」

という2つの働きを同時に行っています。

しかしドアを開けたままでは、髪内部に入った色素が留まり続けることはできません。

  1. “カラー後のpHの戻し”が色持ちの最大の分岐点

カラー直後、薬剤pHの影響でキューティクルは 開いたまま・膨潤したまま の状態です。このままだと、
• 色素が外へ流出しやすい
• 水に触れるだけで褪色スピードが上がる
• 乾燥や摩擦の刺激でうろこの開きが固定化

というリスクが生まれます。

そこで重要なのが 「適切な酸性pHへ戻す(中和・再収れん)」プロセス です。

美容師が行う乳化(色素をなじませながら薬剤を落とす工程)や、pH調整シャンプー、酸性トリートメントなどは、

開いたドアを、素早く“弱酸性”へスムーズに戻しロックする作業

なのです。

これを pHロック設計 と呼んでもいいほど、カラー定着の核心工程と言えます。

  1. pHと褪色の関係をわかりやすく整理

毛髪/ケア工程のpH領域 キューティクル状態 色素の流出 色持ち
アルカリ性(pH7以上) 開きやすい・膨潤 外へ出やすい 短い
中性(pH6〜7) やや不安定 やや出る 普通
弱酸性(pH4.5〜5.5) 引き締まり閉じる 留まる 長い
酸性(pH4以下) 収れんが強くツヤ↑ ほぼ出ない 非常に長い(※質感設計は要注意)

※ 酸性に傾けすぎると手触りが硬く感じることがあるため「質感とのバランス設計」が鍵。

  1. サロンで色持ちが良い人に共通する条件
    • カラー後の髪が弱酸性に戻っている
    • 残留アルカリが処置されている
    • 過度なアルカリ膨潤が残っていない
    • ホームケアのpHも弱酸性で維持されている

反対に褪色が早い人は…
• カラー後のシャンプーが アルカリ寄り or 洗浄力が強すぎる
• トリートメントが pH調整機能を持たず表面だけコート
• ドライヤーの熱で 開いたキューティクルが固定
• 頭皮・汗(pH7前後)により 根元から中性化が進行
• 海水・紫外線・金属イオンで アルカリ変化 or 酸化が促進

などの環境要因が拍車をかけています。

  1. 免疫・肌・髪の“pH恒常性”は似ている

免疫が 恒常性と情報ネットワークのバランスで強さが決まる ように、髪も,
• pHの戻し(恒常性)
• バリア機能
• 情報(薬剤設計と工程)
• 現場(施術)
• 持続ケア(ホーム設計)

すべてのネットワーク設計の巧拙で色持ちが決まります。

つまり pH管理とは“髪を戦わせないための戦略” でもあるのです。

色持ちの鍵は「カラーを入れるpH」よりも「カラー後に戻すpH設計」にあります。
表面だけではなく、pH環境を整えた髪は、色を“逃がさない構造”になるのです。

  1. まとめ
    • 健康な髪のpHは弱酸性(4.5〜5.5)
    • カラー剤はpHを上げて髪のドアを開ける
    • カラー後に弱酸性へ戻せた髪だけが色を閉じ込められる
    • pH中和・再収れん工程が色持ちの本質
    • 手触りの良さと色持ちは両立可能だがバランス設計が必須

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【監修サロン・アクセス情報】

ヘアカラー専門店 toiro

大人女性の髪色悩みに特化したヘアカラー専門サロン。

「髪を傷めず、品よく、美しく」をテーマに、髪質や肌色に合わせたパーソナルカラー提案を行っています。

特にくすみカラー・白髪ぼかし・髪質改善カラーなど、専門性の高い技術を得意とし、地域の方々から高い支持を得ています。

住所:兵庫県西宮市浦風町19-6 ESPERANZA1F

[営業時間]
平日:am 11:00 ~ pm 8:00
土日祝日:am 10:00 ~ pm 7:00

定休日:月曜日

最寄駅

阪神本線 甲子園駅 徒歩3分

(駅近で通いやすく、仕事帰り・買い物の合間にも便利です。)

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【記事監修】井上 将之(ヘアカラー専門店 toiro/カラーリスト)

ヘアカラー専門店 toiro にて、年間多数の大人女性のカラー施術を担当。

髪質・肌色・ライフスタイルを踏まえたカラー設計を得意とし、特に くすみカラー・白髪ぼかし・ダメージレスカラー など、繊細な色表現を求められる技術に高い定評を持つ。

サロンワークの経験に基づき、「年齢を重ねても髪色を楽しめる」ための知識や技術を発信。

髪の悩みに寄り添いながら、科学的根拠(カラー理論)と実践的な施術経験を組み合わせた提案を強みとしている。

専門分野

• 大人女性の似合わせカラー

• くすみカラー・透明感カラー

• 白髪ぼかし・ハイライトデザイン

• 髪質改善カラー/ダメージケア

本記事では、プロとしての経験(Experience)と、色彩・毛髪の専門知識(Expertise)に基づき、信頼性の高い情報(Trust)を提供しています。