リタッチが綺麗に見える 「塗布デザイン」「境目設計」理論
── 半年後の仕上がりまで見据えたプロの技術
リタッチ(根元染め)は、単に“伸びた部分を染める作業”ではありません。
仕上がりの自然さ・色持ち・次回以降の褪色・境界線の見え方まで左右する、非常に繊細な技術です。
プロが作る美しいリタッチには
①塗布デザイン ②境目の設計(ブレンディング)
この2つの理論が大きく関わっています。
ここでは、美容師が押さえておくべき“正しいリタッチ理論”をわかりやすく解説します。
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- リタッチ=「色を繋ぐ」技術
伸びた根元(新生部)と既染毛を、
いかに自然に“つなぐか”がリタッチの本質。
特に以下の要素が仕上がりを左右します。
• 明度差の処理
• 薬剤の強さ
• 放置時間
• 境界線のぼかし
• 毛髪ダメージ
• 髪質(太さ・硬さ・吸い込み)
リタッチは、カラー全体のクオリティを決める“基礎技術”と言えます。
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- 美しいリタッチには「塗布デザイン」が必須
ただ根元に薬剤をのせるのではなく、以下のような“デザインの意図付け”が重要です。
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2-1. 明度差を計算した薬剤選定
根元は黒く、毛先ほど明るくなりやすいため、
• 根元 → パワーある薬剤(アルカリ領域)
• 中間~毛先 → 色味重視の“弱い処方”
といった明度差のコントロールが必須。
特に、
• 白髪率
• クセの強さ
• 吸い込み(ポーラス毛)
• 既染毛の履歴
によって薬剤は微調整する必要があります。
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2-2. 伸び具合による“塗布幅の調整”
根元が10mm伸びた人と、20mm伸びた人では、
カラーの浸透スピードがまったく違います。
• 5〜10mm → 浸透が早い(境目が濁りやすい)
• 15〜20mm → ベタ塗りするとムラが出やすい
そのため、
• 細かく塗り分ける
• 塗布幅を均一にする
• 薬剤量のコントロール
が必要になります。
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2-3. 放置タイムの“ズレ”をデザインする
毛先がポーラスであれば、同じタイムでは“明るく抜けすぎる”ことも。
プロは、
根元 → 中間 → 毛先をずらしながら塗ることで、
時間差で均一な色を作ります。
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- リタッチの最大ポイント=「境目設計(ブレンディング)」
リタッチで“美しさの差”が一番出るのがここ。
境界線をどう処理するかで、色ムラ・線状の明るさが出たり、
逆に美しく溶けるような仕上がりになります。
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3-1. 薬剤の“オーバーラップ量”をコントロール
• 既染毛に薬剤を重ねすぎる → 暗く沈む
• 塗布が浅すぎる → 境目が見える
• 毎回のオーバーラップ量が違う → ムラになる
プロは、
毎回1〜2mm単位でオーバーラップ量を統一します。
これが“半年後、1年後の仕上がりが綺麗”につながる最大の理由です。
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3-2. 塗布ラインを“ぼかす”技術
境目を真っ直ぐ塗るほど線が残りやすくなります。
そこで、以下のような高度な技術が必要。
• コーミングでぼかす
• フェザーテクニックでグラデにする
• 明るさの異なる薬剤を2段階で塗る
• 境目だけ弱めの薬剤に切り替える
この“境界線の見せ方”は、リタッチの中でも最重要。
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3-3. 質感調整まで含めた“境目ケミカル”
境目の髪は特にダメージが出やすく、
• 膨潤
• 吸い込み
• ゴワつき
• ザラつき
が起こりやすい帯域。
そのためプロは以下を使い分けます。
• pH調整剤
• 酸性トリートメント
• 加温コントロール
• コーティング系ケア剤
これにより、
「染まる」「馴染む」「ツヤが出る」 の三拍子が揃います。
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- リタッチを“デザイン”すると半年後が変わる
正しい境目設計を繰り返すと、以下のようなメリットがあります。
✔ 伸びてきても線にならない
✔ 褪色後も綺麗に見える
✔ 次回カラーがムラなく入る
✔ 根元と毛先の一体感が出る
✔ ダメージが溜まりにくい
逆に、適当なリタッチを続けると
• 根元だけ暗く沈む「暗染み」
• 中間が明るく抜ける「バンド(帯状)」
• 褪色したら線で伸びて見える
• ダメージが溜まり続ける
といった“伸びても汚く見える髪”になります。
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- 結論|リタッチは技術の差が結果に出やすい
リタッチは“ただ伸びた部分を染める施術”ではなく、
プロの設計力がもっとも問われるカラー技術。
💡 美しいリタッチの条件
• 塗布デザイン(薬剤量・塗布幅・タイム)
• 境目設計(オーバーラップ・ぼかし・ケミカル)
• 履歴の読み取り
• 髪質の見極め
• 将来の褪色まで計算したデザイン
これらが揃って初めて、
“伸びても綺麗なリタッチ”が完成します。
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【監修サロン・アクセス情報】
大人女性の髪色悩みに特化したヘアカラー専門サロン。
「髪を傷めず、品よく、美しく」をテーマに、髪質や肌色に合わせたパーソナルカラー提案を行っています。
特にくすみカラー・白髪ぼかし・髪質改善カラーなど、専門性の高い技術を得意とし、地域の方々から高い支持を得ています。
住所:兵庫県西宮市浦風町19-6 ESPERANZA1F
[営業時間]
平日:am 11:00 ~ pm 8:00
土日祝日:am 10:00 ~ pm 7:00
定休日:月曜日
最寄駅
阪神本線 甲子園駅 徒歩3分
(駅近で通いやすく、仕事帰り・買い物の合間にも便利です。)
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【記事監修】井上 将之(ヘアカラー専門店 toiro/カラーリスト)
ヘアカラー専門店 toiro にて、年間多数の大人女性のカラー施術を担当。
髪質・肌色・ライフスタイルを踏まえたカラー設計を得意とし、特に くすみカラー・白髪ぼかし・ダメージレスカラー など、繊細な色表現を求められる技術に高い定評を持つ。
サロンワークの経験に基づき、「年齢を重ねても髪色を楽しめる」ための知識や技術を発信。
髪の悩みに寄り添いながら、科学的根拠(カラー理論)と実践的な施術経験を組み合わせた提案を強みとしている。
専門分野
• 大人女性の似合わせカラー
• くすみカラー・透明感カラー
• 白髪ぼかし・ハイライトデザイン
• 髪質改善カラー/ダメージケア
本記事では、プロとしての経験(Experience)と、色彩・毛髪の専門知識(Expertise)に基づき、信頼性の高い情報(Trust)を提供しています。